PKを待ちながら

2014年公開のインド映画『PK』のネタバレです。『きっと、うまくいく』のランチョーを演じ、『チェイス!』のサーヒルを演じた「国宝級」俳優、アーミル・カーンの主演作です。鑑賞済みの方、ネタバレOKの方はどうぞ。未見の方は10月29日全国公開をお待ちください!

ヒンドゥー教

シュリ・シュリ・ラヴィ・シャンカール

『PK』のオープニングで流れる「謝辞」に名前の出る、シュリ・シュリ・ラヴィ・シャンカール。ひと言でいうと、「タパスヴィーみたいな人」(詐欺師ではないですが)です。Art of Livingというヒンドゥー教系の組織の主宰者です。
あれだけヒンドゥーのグルをdisる映画にも関わらず、どういうこっちゃ、と思ったら、なんと撮影場所として彼らのアーシュラムを借りたそうです。懐が深い…。まあ、つまり、「シュリ・シュリ・ラヴィ・シャンカールはタパスヴィーではない」という意味になるのかもしれません。
もともと、ヒンドゥー教は、サイババのような「指導者」が今も昔もたくさん存在します。立派な人もあれば、スキャンダラスな問題を起こして逮捕される人もいます。インドでTVをつけると、その種の人の説教が延々と流れていたりします。どうも、ヒンドゥーの人達は、強力で魅力的な宗教的指導者を求めずにいられないようです。彼らはたいていの場合、信者を集め、献金を集め、寺院を建築し、学校や病院をつくり、無料の食事の提供などをします。行政の不備を埋めているとも言えるので、社会構造上、欠かせない存在なのかもしれません。
考えてみれば、国に税金を払っても見返りがない(ような気がする)けれど、宗教団体への寄付は功徳を積むことになり、より良い来世が望める(ような気がする)ので、どうせお金を使うなら、宗教団体に寄付するほうがよいのかもしれません…。
宗教が行政的役割を果たすのはインドやヒンドゥー教に限ったことではありませんが、インドでは物凄く顕著にあらわれるのを感じます。そういえば、マザー・テレサも、インド人でもヒンドゥーでもないのに、インドで強力な集金手腕を発揮していましたね。

ヒラーニー監督がシュリ・シュリ・ラヴィ・シャンカールについて語っています。
http://indianexpress.com/article/entertainment/bollywood/why-rajkumar-hirani-expressed-gratitude-to-sri-sri-ravi-shankar/

サンダル

PKがヒンドゥー寺院へ供物を持ってお祈りをするも追い出され、入口で脱いでおいたサンダルがなくなるシーンがあります。これに懲りたPKは、以後、門前でサンダルを脱ぐ時にはチェーンでつなぎとめる、という様子がコミカルに描かれます。

実際、ヒンドゥー寺院は土足厳禁で、映画の通り、サンダルは門前で脱ぎ散らかされています。毎日何百、何千人が訪れるような有名寺院であれば、無料または50パイサ程度の預け場があることもあります。私自身、いつも、いつかサンダル盗まれるんじゃないか・・・と思いながら脱いで行くのですが、今のところ、なくなったことはありません。インド人、ああ見えて意外ときれい好きというか神経質というか浄不浄にうるさいので、他人の履いたサンダルなんぞ汚らしくって泥棒すら持っていかないということでしょうか。
なお、「神聖なお寺の門前だから盗まれないのかな?」ということは、断じてありません。寺院内部のご本尊の前で、財布をすられた私が断言します。
スィック(シーク教)の寺院では、サンダル預け場でPKが一生懸命靴磨きのセーワー(ボランティア)をしているシーンが出てきました。やはりヒンドゥーと違って、「平等」を説くスィックだからこそのボランティアかもしれません。

サンダルがなくなったPKが、代わりに選んだ木製の歩きにくそうなサンダルは、儀礼用のもの。昔の人や、今でも寺関係者が履くこともあるようですが、お香を焚いて祀ってありましたから飾りというか礼拝用でしょう。
映画に出てきた寺院のシーンは、どうも作り物っぽいのですが、一応、ヴィシュヌ系の寺院ということになると思います。「ラーマーヤナ」で、城を追われたラーマのもとにやって来たバラタがラーマのサンダルを持ち帰り、玉座に据えたというエピソードがありますので、サンダル=ラーマ=ヴィシュヌ、ということになります。また、ヴィシュヌ系寺院ではブッダの「仏足石」のようにヴィシュヌの足型を祀っていることがよくあります。

名誉の負傷

ボーマン・イラーニー演じるチェリーが、ズボンをずり下げて「ケツの傷見せたろか!?」と言うシーン。タパスヴィの信者に槍でブスッとやられた古傷ですが、「キズが3個」と言っています。なぜ3個かというと、3回刺されたのではなくて、先が3つに分かれている三叉の矛=三叉戟(さんさげき)で刺されたから。英語でトライデント、ヒンディー語でトリシューラと呼びます。

なぜそれがわかるかというと。ヒンドゥー教にはたくさんの神様が存在するのですが、それぞれの神様の特徴的な持ち物、スタイルが決まっています。そして、その神様の持ち物を神像と一緒に飾ったり、イベント的に持ち歩くこともあります。そして、三叉の矛はシヴァ神のシンボルです。この画像の後ろ右手に持っているのが、「三叉戟」です。


なので、ヒンドゥー教の特に熱心な信者が持ち出す槍といったら、あの三叉の槍なわけで、一刺しで3つ傷ができてしまうのです。

インドの宗教人口

PKはラブストーリーなのですが(断言)、インドの宗教事情≒基礎知識がたくさん盛り込まれているので、ぽちぽちとおおまかな情報をまとめます。

2011年のインドの国勢調査によると、総人口は約12億人。
宗教別の割合は(以下、「約」をはずしたざっくりとした数字)
ヒンドゥー教 83% 10億人
イスラム教 10% 1億人
キリスト教 2% 2千万人
その他 3% 3千万人
(おそらく、シーク教、仏教、ゾロアスター教、ユダヤ教が含まれます)

イスラム教、シーク教は圧倒的に少数派なのですが、比較的デリーを含む北インドに集中して居住していること、割合的に少ないとはいえ、絶対数の多さから、無視できないコミュニティーであるといえます。
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アーミル・カーン(『きっと、うまくいく』のランチョー、『チェイス!』のサーヒル)のファンです。 アーミル主演、2014年12月インド公開の映画『PK』は日本未公開ですが、ネタバレをブログに書いています。 アーミルとPKに興味のない方は、積極的にブロック、RTブロック、ミュートなどしてくださいね!
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