PKを待ちながら

2014年公開のインド映画『PK』のネタバレです。『きっと、うまくいく』のランチョーを演じ、『チェイス!』のサーヒルを演じた「国宝級」俳優、アーミル・カーンの主演作です。鑑賞済みの方、ネタバレOKの方はどうぞ。未見の方は10月29日全国公開をお待ちください!

ヒンドゥー教

Bhagwan Hai Kahan Re Tu 巡礼編

「自分の神」を探す方法に行き詰ったPK。手当たりしだいに「すべての神」に祈ることにします。
 

Bhagwan Hai Kahan Re Tuの楽曲で、PKがインド各地各種の宗教行事、礼拝に参加する様子が描かれます。おそらく、いくつかは合成。ここで描かれる宗教行事を整理してみます。いくつか、ツイッター上で教えていただきました。ありがとうございました! まだよくわからないシーンもあるので、ご存じの方、教えていただけると嬉しいです・・・。

◆ガートで沐浴。ヒンドゥーです。建物の雰囲気からして、おそらく北~西インド。川の上流からお花が流れてくるのは演出と思われます。シヴァリンガム(シヴァ神の象徴とされる男根像)に牛乳を注ぎます。ヒンドゥーでは、神像(石像)に牛乳やオイルや聖水をバシャバシャかけてお世話する儀式がよくあります。有名な寺院の神様は、だいたいオイルで黒光りしています。
◆イスラームの聖者廟でお墓に布をかける儀礼。(コメント欄で教えていただきました。ありがとうございます!)PKがかぶっている帽子は、イスラーム帽です。
◆水に沈みます。キリスト教の洗礼。
◆次はスィック。スィック寺院では、ターバンを巻いていない男性は、代わりにバンダナを頭に巻きます。
◆ムスリムの行者?ヒンドゥーの行者?に献金。クジャクの羽根は、ヒンドゥーではクリシュナやムルガンのイメージとして好んで使われますし、ムスリムが使うこともあるようです。今ひとつ判別できないので、ご存知の方、ぜひ教えてください!
◆黄色い粉(ターメリック)まみれのヒンドゥーの行事。プネーの近く、Jejuriという町が巡礼地のようで、そこのKhandoba神≒シヴァ神の祭礼のようです。ご神体を綱でひいていると思われます。


◆ジャイン教の巨大なゴーマテーシュワラ像に(おそらく)牛乳を注いでいます。南インド、カルナータカ州のシュラバナベラゴラで12年に1度行われる祭礼のようです。


◆キリスト教の教会で礼拝。
◆イスラームの建物の前でぼんやり座っていたら施し(チャパティ)をもらう。
◆イスラームのモスクで集団礼拝。
◆スイックの靴置き場で靴磨きのボランティア(セーワー)。スィックはセーワーを好みます。映画『聖者たちの食卓』では、アムリトサルの黄金寺院で大量の食事をつくり、参拝者にふるまう様子が記録されています。
◆ガート周辺に住まうヒンドゥーのサードゥになんか紐まいてもらう。
◆黒い服を着て胸を叩く。イスラーム教シーア派の行事、アシューラー。
◆刃物で自分の背中を打つ。こちらも続けてアーシュラー。コメント欄で教えていただいた映像を貼ります。流血注意なので、埋め込みでなくリンクにしておきます。
https://youtu.be/2rU-4YqnbwE
◆ヒンドゥーのシヴァ神像。
追記:陽明さんに教えていただきました! このシヴァ神像は、モーリシャスにあって、インド政府から贈られたものだそうです。
◆キリスト教の十字。
◆ヒンドゥーのガネーシャ神像。タイのチャチュンサオにあるそうです。行きたい・・・。
http://matome.naver.jp/odai/2138393359268922801
◆バスに乗ってヒンドゥーの聖地巡礼。額にいろいろ塗るのは、ヒンドゥーです。ちなみに、横に3本白線は、シヴァ系。縦に赤1本、またはさらにその外側に白でU字を描くのはヴィシュヌ系。
◆歩いて巡礼。真っ白な服でマスクまでつけるのはジャイン。
◆寺院本殿の周りをごろごろ礼拝。ヒンドゥーです。マハラーシュートラ州ナーシクのKalaram(黒いラーマの意)寺院で撮影したそうです。この寺院のオフィシャルサイトもあります。ここも行きたい・・・。ラーマ、ラクシュマナ、シーターの像が祀られているようです。
http://shrikalaramsansthannashik.org/english/index.html
◆丘のうえにたたずんでいるのは、太陽礼拝・・・?
◆ヒンドゥー寺院の木になんか紐巻いてます。
◆ヒンドゥー寺院に膝立ちで礼拝。ガート周辺の映像は、全部同じところかなあ。
◆最後はヒンドゥー神像製作工房。

こうして見ると、PKはずいぶんあちこち巡礼したものですね。ヒンドゥーの人たちにとって、寺院参拝は生活であり、義務であり、レジャーでもあります。インドの保守的な女性は、あまりお家の外に出ないのですが、「お寺に行く」というのは、外に出かける唯一の口実です。映画でも「お寺に行く」と称して恋人と密会するシーンがちょいちょい出てきますね。
 

『PK』vs『ラーマーヤナ』

『ラーマーヤナ』という物語(神話)があります。1800年くらい前のインドで成立したという長い長いお話です。話の途中でやたらに小咄が盛り込まれているためストーリーが追いにくいのですが、簡単にまとめると、

◆人々がラーヴァナという名の暴れん坊に苦しめられる。
◆天界の神様が協議してヴィシュヌ神派遣を決定。
◆ヴィシュヌ神は人間=ある国の王子として生まれ、ラーマと名づけられ、立派に成長する。
◆聖者にこき使われたり、他国の姫シーターと結婚したり、継母にいじめられたりする。
◆ラーヴァナと対決してやっつける。
◆妻シーター、自分の不貞を疑ったラーマに対して抗議の自殺。
◆ラーマ、使命果たしたし、嫁死んだし、人間としての生を終え、天界に戻る。
◆結論:ラーマ=ヴィシュヌ神は偉大なり!

神様が人間として生まれ落ちたり、小咄が盛り込まれたりする構造はインド神話の常套です。これらの長くて入り組んだ物語は、結局のところ、いかに神が偉大で素晴らしい存在であるかの修飾であり、最終的には「神は偉大なり」の一言に集約されていきます。
カタカリやバラタナティヤムなどの古典舞踊を観る機会がありましたら、ぜひ観察なさってみてください。歌って、踊って、ハラワタ引きずり出したり、奇声をあげたり、なんだかんだの末にたいてい最後は神を称える歌詞と仕草で締めくくられます。(イマドキのアレンジだとダンサーのドヤ顔で終わりますが。)

さて、ところで。『PK』も、この構造を踏襲していると見ることができそうです。ある日地球に現れ、学び、恋をし、敵を打ち負かし、小咄を盛り込みつつ、人々を助けて、元のところへ去っていく。
少し違っているのは、その結論となる一文。
PKが名刺サイズの紙に書いた、あの一文。あそこへ向かって2時間半の物語がぎゅーっと進行していく、そんな風に思っています。

株取引にはラクシュミー

ジャッグーのパパが株取引画面にかざしていた女神はラクシュミーです。富と美を司る神様で、ヴィシュヌの配偶者ということになっています。この絵姿はガジャラクシュミーといって、手からざらざら金貨を出している特に縁起のよい絵柄です。
 

シヴァ神の家庭

ヒンドゥーの神様は結婚をします。子どももつくります。シヴァ神の妻はパールヴァティー(ドゥルガー、カーリーとも同一視されます)、息子は象顔ガネーシャとムルガン(地域によってスカンダ、カールッティケーヤとも呼ばれます)。シヴァ神コスプレしたダンサーをトイレに閉じ込めたシーンで「あんたに子どもが二人いるのは知ってるよ! ガネーシャとカールッティケーヤだろ! 二人とも十分大きいだろ!」とPKが詰め寄りますが、この二人の息子のことです。
 

PKのリモコンvsタパスヴィーの宝珠

PKがラージャスターンの砂漠で盗まれたリモコンを盗人から買い取ったタパスヴィー。彼はこのリモコンのことを「シヴァ神のでんでん太鼓から壊れ落ちた玉」(shiv ji ke damroo se tootaa hua mankaa)と称し、これを祀った寺院を建築するべく、信者から献金を募ります。
「シヴァ神のでんでん太鼓」とはなんぞや! 非ヒンドゥーの人には意味不明なので、英語字幕では簡単に訳されていますし、もし日本公開された場合でもそこのところの説明は省かれるでしょう。
まず、シヴァ神について少し説明を。ヒンドゥー教には主要な神が3人います。ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァ。
ブラフマーは「創造を司る」などと表現されますが、実際のところ、インドでブラフマーを祀る寺院は1か所か2か所のみです。古い時代の神様なので、現在ではほとんど信仰を集めていません。
ヴィシュヌは「世界秩序を維持」などと表現されます。化身(アヴァター)がたくさんあり、「ラーマーヤナ」のラーマ、笛を吹く姿が特徴的なクリシュナもヴィシュヌの化身ということになっています。
そしてシヴァ。「世界の破壊と再生を司る」などと表現されます。瞑想する姿、踊る姿(ナタラージャ)で描かれることが多いです。シヴァの特徴的な持ち物である太鼓は、「でんでん太鼓」です。写真、見えるでしょうか。太鼓の下に玉が2個、ぶら下がっています。
 
タパスヴィーが言っていたのは、この玉のことです。「シヴァ神の太鼓についてる二個の玉のうち一つをありがたくいただいた。この神聖なるシヴァの所有物を見せてやるから金寄越せ」というのが、彼の主張だったのです。
 
記事検索
アーミル・カーン(『きっと、うまくいく』のランチョー、『チェイス!』のサーヒル)のファンです。 アーミル主演、2014年12月インド公開の映画『PK』は日本未公開ですが、ネタバレをブログに書いています。 アーミルとPKに興味のない方は、積極的にブロック、RTブロック、ミュートなどしてくださいね!
メッセージ