PKを待ちながら

2014年公開のインド映画『PK』のネタバレです。『きっと、うまくいく』のランチョーを演じ、『チェイス!』のサーヒルを演じた「国宝級」俳優、アーミル・カーンの主演作です。鑑賞済みの方、ネタバレOKの方はどうぞ。未見の方は10月29日全国公開をお待ちください!

トリビア

階段井戸

PKの仮住まい、アグラーセンの階段井戸(ugresen ki baoli)。デリーに実在する遺跡です。『PK』公開後、観光客が殺到しているとか。デリーへ行くときには、ぜひニンジン持参で訪れたいですね!
階段井戸は、特にラージャスターンやグジャラートなど、干上がる乾季とモンスーンに襲われる雨季とでは給水がまったく安定しない地域で主に建設されました。19世紀頃までに建設され、時代によってはヒンドゥー様式とイスラーム様式が融合した壮麗な彫刻がほどこされています。しかし、現在はほとんどの階段井戸は廃墟として朽ち果てているようです。というのも…英国統治時代に、「不衛生だから」という理由で禁止されたから。イギリス人が! イギリス人に! 「不衛生」とか言われちゃったよ! 窓から排泄物投げ捨ててた国の人に!
ただ、ごく近年、観光資源として、また貯水技術、建築技術の面からほんのり注目されてもいるようです。そういえば、『PK』公開後に訪れた方が「改修中だった…。」とどこかに書かれていたので、つまりは改修する価値があるということで、どこからか資金も出ているわけですね。
なお、インドで「遺跡に住みついている」と言うと、狂人というか世捨て人というか修行者というか、そういうイメージがあります。PKの不思議ちゃんぶりを強調するアイテムでもあったわけです。
「階段井戸」または「stepwell」で画像検索すると、ステキ写真がいっぱい見られますよ!

コンノート・プレイス

PKが初対面のスィックのご老人に迷うことなくお金を渡すシーン。ロケ地はおなじみデリーのコンノート・プレイス。
なんか見たことある・・・? 『きっと、うまくいく』で、アーミル演じるランチョーが、カリーナ・カプール演じるピアの腕時計がなくなった、とピアの値札野郎婚約者に嘘をついて反応を見るシーンも、このコンノート・プレイスでしたネー。
どちらの映画でもなんとなく素敵な場所に見えますが、実際は閉店した店舗も多く、やや廃墟感のただようスポットとなっております。

宗教を当ててみろ

PKが「この人たちの宗教を当ててみろ」とタパスヴィーに迫るシーン。インドの宗教に多少なじみのある方であれば、何をどう入れ替えたのか、すぐにわかるのですが、整理してみます。

オレンジ色の布を巻き付け、菩提樹の実の数珠を首にかけ、額に赤い印をつけ、髪とひげを伸ばし放題の人
==>外見はヒンドゥーの修行者
==>名前はスクィンダル・スィン・ベーディー。「~ダル」はスィックによくある名前、「スィン」はスィックのミドルネーム、「ベーディー」はスィックのファミリーネームなので、実はスィック教徒だとわかります。

首から十字架をかけて胸の前で十字を切った人

==>外見はキリスト教徒
==>「アッサラーム・アライクム」とイスラーム教徒の挨拶をし、名前はアッバース・アリ・ヤクーブなのでイスラーム教徒です。「アリ」は典型的なイスラーム教徒の名前。

ターバンをかぶり、口・顎・頬に髭を生やし、鉄輪のブレスレットをはめた人
==>外見はスィック教徒
==>名前はマハーヴィール・ジャイン。ジャインさんはもれなくジャイン教徒です。

白い布だけを巻き付け、装飾品をほとんどつけていない人
==>外見はジャイン教徒
==>名前はクリストファー・デスーザ。「D'」のつく名字は、ポルトガルの系譜を汲むキリスト教徒です。ファーストネームも西洋風。

真っ黒なチャドルを着た人
==>外見はイスラーム教徒の女性
==>ジャッグーです。「ナマスカール」とヒンドゥーの挨拶をします。(なお「ナマステ」はヒンドゥー教徒以外のインド人も使えるように、現代になってから創り出された挨拶ことばです)名前はジャガトジャナーニー・サハーニー。いかにもヒンドゥー教徒です。

宗教的側面に限らず、インドでは外見、身なりがかなり重要です。日本人であっても、バックパッカー風の汚い恰好をしていると、宝飾店では相手にしてもらえなかったりします。初対面のインド人相手にはったりをかませたいときは、シルクの高級そうな服を着て、金のアクセサリーをじゃらじゃら身に着けて臨むことをおすすめします。・・・そんな機会はそうそうないかな・・・。

シーク教について

『PK』には、インドの様々な宗教、様々な社会的地位に属する人が出てきます。ヒンドゥー教徒、イスラーム教徒、スィック教徒、ジャイン教徒、キリスト教徒、泥棒、楽団員、医師、床屋、娼婦、警察官、土産物屋、寺男、ダフ屋、犬、猫、らくだ、マスコミ、宗教家、大学生、大使館員、大学職員、新生児、未亡人、花嫁、老夫婦、物乞い…。改めて見ると、なんともバリエーション豊富で、確かにインドの多様なリアルをうまく切り取っているように思います。
デリーを中心に進むお話なので、ターバンをかぶったスィック教徒がわりとひんぱんに登場します。(なお「シーク教徒」の表記が比較的メジャーなのですが、私はヒンディー語の先生にいつも発音を矯正されるので、発音に近い「スィック」と書いております)
スィックの男性は、ターバンをかぶり(中は長髪)、ヒゲをのばし(体毛を切るのが禁忌)、肉食するので体格がよい、というのが特徴です。そして名前は必ずスィンSingh。このスィン、ミドルネームのようなので、フルネームは○○・スィン・△△となりますが、○○・スィン、とファミリーネームのように名乗る方も多いようです。
1984年、スィックの分離運動、インディラ・ガンディー首相によるスィックの聖地・黄金寺院攻撃、スィックによる首相暗殺、その結果の反スィック暴動の渦中では、ターバンを脱ぎ、「スィン」を外して、○○・△△と名乗った方もいたようです。なお、女性のミドルネームは全部コウルです。そんなわけで、『めぐり逢わせのお弁当』のイラ役、ニムラト・コウルさんはおそらくスィックです。女性の服装や髪型には特に際立った特徴はないんですよね…。
『PK』に登場する、サンジャイ・ダット演じるバイロン・スィン。彼はスィンだし、ターバンだし、ヒゲだし、体も大きいのですが、スィックではありません。スィンという名前は、ラージャスターンにも多い名前で、絞り染めのターバン、旅する楽団はラージャスターンの人の特徴です。また、スィックのヒゲは、口ヒゲだけではなく、必ず頬・アゴ全体に生やしています。ファッションというより体毛を切るのが禁忌のためです。とはいっても、みなさん適度にトリミングしていると思われます。
ところで、ハーレクイン小説に頻繁に登場するアラブのシェイク(シーク)とスィックは完全に別モノです…!

PKの口ぐせ ルール(lool)

アーミル演じるPKは、ボージプリー語を喋っているのですが、「訛ったヒンディー語」という感じなので、ヒンディー語のわかる人であれば、だいたい理解できるようです。ただ、時々、ボージプリー独特の単語も使っていて、ダメな状態を表現するのに、「ルール(lool、लूल)」という単語が頻繁に出てきます。ボージプリー語のコピー元、プルジャリアも使っていたので、彼女の口ぐせなのかもしれません。
マレーシアの映画館やDVDので英語字幕では、この「ルール」は、おおむね「kaput」と訳されていました。私、勉強不足で、この英単語に初めて出会ったのですが、「故障した」とか「ダメになった」という意味だそうです。なお、パンジャービー語でも、同様にこの「ルール」という言葉を使うそうです。
『PK』のいちばん最後は、カメオ出演のランビール・カプールの台詞で締めくくられます。彼もPKから言葉を習ったらしく、ボージプリー語を喋るのですが、その最後の台詞は、「ルール!サーラー!(लूल ! साला!)」です。「サーラー」は、ヒンディー語でたいへんお行儀の悪い言葉で、「shit! fuck!」「クソ!チクショー!」といった意味になります。終盤、涙なしに観られない展開になりますが、最後はこの台詞のおかげで、フフッと笑える仕上がりになっています。
さて、映画のなかで、PKは何回「ルール!」を使っているかな…。
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アーミル・カーン(『きっと、うまくいく』のランチョー、『チェイス!』のサーヒル)のファンです。 アーミル主演、2014年12月インド公開の映画『PK』は日本未公開ですが、ネタバレをブログに書いています。 アーミルとPKに興味のない方は、積極的にブロック、RTブロック、ミュートなどしてくださいね!
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