『PK』には、インドの様々な宗教、様々な社会的地位に属する人が出てきます。ヒンドゥー教徒、イスラーム教徒、スィック教徒、ジャイン教徒、キリスト教徒、泥棒、楽団員、医師、床屋、娼婦、警察官、土産物屋、寺男、ダフ屋、犬、猫、らくだ、マスコミ、宗教家、大学生、大使館員、大学職員、新生児、未亡人、花嫁、老夫婦、物乞い…。改めて見ると、なんともバリエーション豊富で、確かにインドの多様なリアルをうまく切り取っているように思います。
デリーを中心に進むお話なので、ターバンをかぶったスィック教徒がわりとひんぱんに登場します。(なお「シーク教徒」の表記が比較的メジャーなのですが、私はヒンディー語の先生にいつも発音を矯正されるので、発音に近い「スィック」と書いております)
スィックの男性は、ターバンをかぶり(中は長髪)、ヒゲをのばし(体毛を切るのが禁忌)、肉食するので体格がよい、というのが特徴です。そして名前は必ずスィンSingh。このスィン、ミドルネームのようなので、フルネームは○○・スィン・△△となりますが、○○・スィン、とファミリーネームのように名乗る方も多いようです。
1984年、スィックの分離運動、インディラ・ガンディー首相によるスィックの聖地・黄金寺院攻撃、スィックによる首相暗殺、その結果の反スィック暴動の渦中では、ターバンを脱ぎ、「スィン」を外して、○○・△△と名乗った方もいたようです。なお、女性のミドルネームは全部コウルです。そんなわけで、『めぐり逢わせのお弁当』のイラ役、ニムラト・コウルさんはおそらくスィックです。女性の服装や髪型には特に際立った特徴はないんですよね…。
『PK』に登場する、サンジャイ・ダット演じるバイロン・スィン。彼はスィンだし、ターバンだし、ヒゲだし、体も大きいのですが、スィックではありません。スィンという名前は、ラージャスターンにも多い名前で、絞り染めのターバン、旅する楽団はラージャスターンの人の特徴です。また、スィックのヒゲは、口ヒゲだけではなく、必ず頬・アゴ全体に生やしています。ファッションというより体毛を切るのが禁忌のためです。とはいっても、みなさん適度にトリミングしていると思われます。
ところで、ハーレクイン小説に頻繁に登場するアラブのシェイク(シーク)とスィックは完全に別モノです…!