PKを待ちながら

2014年公開のインド映画『PK』のネタバレです。『きっと、うまくいく』のランチョーを演じ、『チェイス!』のサーヒルを演じた「国宝級」俳優、アーミル・カーンの主演作です。鑑賞済みの方、ネタバレOKの方はどうぞ。未見の方は10月29日全国公開をお待ちください!

2016年10月

『PK』公開前夜

ついに明日、映画『PK』が日本公開となります。興行的にはこれからが本番、お客さんの入り具合が非常に気になるところですが、当ファンブログとしては、ここで一つの区切りを見ることになります。本来であれば、お世話になった皆様方に個別にご挨拶申し上げるべきところですが、恐縮ながらこの場を借りて、お礼を申し上げたいと思います。

2014年10月29日、東京国際映画祭の舞台挨拶にアーミルが来日したあの日から2年間、ずっとアーミルと『PK』のことばかりを考えてきました。いったいどれだけの時間と労力とお金をつぎ込んだことやら。狂ったように、熱に浮かされたように、マジュヌーンのように、発情期の牡象のようにオンラインやらオフラインやら国外やら国内やらビッグサイトやらを駆けずり回ってきましたが、ふと、1か月ほど前に、雷に打たれたように気づいたことがあります。

『PK』がきっかけで、なんと多くの人たちとの素晴らしき出会いがあったことか。

『PK』がなければ出会うことのなかったであろう方々と出会い、感動を共有し、ビールを酌み交わし、喜びを分かち合い、何物にも変え難い豊かな時を過ごすことができました。また、皆様の純粋なご好意により、とても貴重な情報や機会、お宝も分けていただきました。いま、私の心とお部屋の中は、金銀宝石に勝る輝きで満たされています。まるで人付き合いが苦手で引きこもりの私に、このような経験を与えてくださったこと、『PK』をきっかけにして出会った皆様には深く深く感謝しています。本当にありがとうございます。

そして、そもそもすべての始まりは『PK』であり、インドという国及び文化、インド映画、俳優アーミルとヒラーニー監督の豊かな感受性と才能、そして尽きることない挑戦の精神に対する尊敬の念はつきません。極東の片隅に暮らす一般人に、このような歓喜をもたらすことができるなんて、なんと驚嘆すべき力でしょうか。
『PK』とアーミルを追いかける中で、多くを学び、多くの感情を味わいました。今や、経典を求めて天竺へ渡った三蔵玄奘の気持ちが、生涯クリシュナを讃えて過ごしたミーラーバーイーの気持ちが、以前より近しく感じられます。周りのすべてが見えないほど熱狂のなかで、それまで知らなかったこと、うまく理解できなかったことが少し見えてきたような気がします。

それから、お仕事として『PK』に携わった皆様へ。エンタメ、広告宣伝のお仕事は時に過酷なものだとお察しします。しかし皆様の真摯なお仕事のおかげで、こうして生きる喜びと希望を得ている小市民が確かに存在しています。こんな一部のマニアにワクワクする日々を与えてくださったこと、とても感謝しています。

さて、今まできちんと書いていなかった『PK』の感想文をここで書いておきます。『PK』の何がそんなに胸を熱くするのか、うまく把握することも表現することもできず、ずっと2年間ポツポツとこのブログを綴ってきました。今の時点で感じているのは、この作品は「人がハッピーでない時にどう生きればいいのかについて、ささやかで確かな知恵を授けてくれる」ということです。私はどうやらハッピーエンドの物語があまり好みではないようで、どうも「なーんだ、結局ハッピーエンドか」という感情が頭をもたげてきます。「人生、ハッピーエンドじゃないことのほうが多いんだから、どうしたらいいのか教えてよ…」そんな問いに『PK』が少しだけヒントをくれます。『PK』の登場人物は皆、それぞれが困難に出会い、苦しみもがき、なんとか解決策・妥協作を見出して生きています。そんな人々と観客に対して、PKは優しく教えてくれます。楽しく踊って充電するんだよ、愛する人を信じるんだよ、まがい物には気をつけるんだよ、神は常に見守っているのだよ…。
ニッチな現代英語文学を異様な熱情で追い続ける都甲幸治氏がこんなことを書いていました。「複数の文化に根ざした小説を読むことで、僕たちの精神の地平は拡がるだろう」(英語で読む村上春樹2016年5月号 NHK出版)まさに私の精神の地平は、『PK』、そしてこれまで出会ったすべての皆様のおかげで拡がりを見ることができました。

どうか、『PK』のメッセージが、必要としている人のもとに届きますように。

…いや。

ぜひともPKのメッセージを受け取りに走ってください!! 今すぐ劇場へGO!! 上映館のチェックはこちらから!

近くに映画館がない? たまには国内旅行でもしてみませんか?! 正直言って、アーミル作品が日本公開されることは、もう二度とないと思うんですよね〜。行くなら今ですよ!

『PK』試写会

10月5日あたりから、怒濤の『PK』試写会ウイークに突入しました。私が確認できた範囲で、試写会が開催されるのは東京4か所、大学4か所、大阪1か所、札幌1か所。各会場、数百のキャパがあるはずですから、…すごい。関係者さんの意気込みを感じます。「この映画なら内容で、口コミで、イケる」という覚悟なのだと思います。

「今さらお前が行くな」と言われそうではありますが、『PK』関連イベントとあらば、じっとしてはいられません。1か所だけ、試写会へ行ってまいりました。というか、いくつか応募したうち、1か所しか当選しませんでした。
10月6日、おなじみ一ツ橋ホール。開場時間ギリギリに行くと、階段手前ですでに行列。試写会の動員力って、ホントにすごい。会場は当然、満席。中高年ご夫婦、学生さん、老若男女いろんな層の方がいらしてました。

image

客入れ中はサントラが流れていたのですが、劇中では少ししか流れないDil darbadarがかかったところで涙腺決壊(←まだ本編始まってない)。上映前アナウンスで「上映時間は153分」と流れると、会場から軽く悲鳴が(笑)。つまりインド映画や『PK』をあまりご存じない方が多かったようです。大丈夫…きっと体感時間は短いから…と念を送っておきました。

上映中、会場の反応は良かったと思います。最初はなんだかノリがつかめない雰囲気がありましたが、「留置場チェックイン」あたりから、「なるほど、コレ、笑っていいやつだ〜」とほぐれてきたようで、ここかしこで笑い声が上がっていました。「シヴァ神のお導きでリモコン発見」のシーンで、隣りのご婦人が思わず「あっ、あった!」と声を上げていたのが、個人的にはたいへんツボでした。

最後の20分、皆さん息を呑んで物語の行く末を見守っていました(私は号泣中)。『PK』の伝えようとしたところが、確かに日本の観客の皆さんに伝わっていたと思います。なお、最後の最後のオチには笑い声が上がらなかったので、やはりインド映画には縁のない方が多かったようですね。

この日は「#PK見たよ をつけてSNSに感想を投稿するとプレスシート(マスコミ向けのプログラムのような資料)を先着100名にプレゼント!」キャンペーンもあったので、しっかりいただいてきました。

それにしても、したコメの屋外上映も良かったのですが、やはり映画館で観ると楽しいものですね! さらに10月29日の公開が待ち遠しくなりました!

Aasman Pe Hai Khuda

過去記事を再編してお届けします。

『PK』終盤、列車爆破のシーン。PKのラジオから流れる音楽は、これもまたラージ・カプール主演の映画Phir Subah Hogi(1958年)から、Aasman Pe Hai Khuda(アースマン・ペ・ハェ・クダー、神は天上におわす)。

 

このシーンで流れる部分の歌詞は、「神は天上に、我らは地に。もはや神は語らない。たとえ殺りくや爆破が起きても」という内容です。60年前の映画の楽曲の詩が、今日もリアルに響きます。
 

Love is a Waste of Time

過去記事を再編してお届けします。

Automatic Battery Recharge(元気チャージ体操)に続くこの楽曲では、PKがジャッグーにほんのりと恋をしていく様子が描かれています。「Love is a waste of time」というフレーズの前フリとして、実はジャッグーが「恋愛とはどんな感情か」をPKに説明するシーンがあったのですが、 残念ながらカットされていて、コレクターズ・エディションDVD(インド版)の特典映像として収録されています。「I love you... I miss you... I love you... I miss you... 恋人同士はそんなふうに話をするのよ」「そんなの時間のムダづかいじゃないか!」という会話が二人の間で交わされています。
『PK』の終盤、ジャッグーの朗読会の最後の台詞は「I miss him」で締めくくられます。ジャッグーの「I love you」はサルファラーズのものだけれど、「I miss you」はPKに捧げられたのでした。

ところでこの楽曲、ちょっとした秘話があります。こちらの47分にわたるヒラーニー監督のインタビューは2014年11月、『PK』公開前のものですが、15:10あたりから監督自身が語っています。


「Love is a waste of time」というフレーズ、アイディア自体は打ち合わせを重ねるなかで出てきたものですが、楽曲として仕上げるにあたって、作詞家Amitabh Battachariyaに依頼しようと考えたそうです。Dhoom3、2States、Chennai Express、Go Goa Gone(!)などのそうそうたる作品に作詞家として名を連ねている著名な作詞家兼プレイバックシンガーです。さっそく携帯を取り出して「作詞家Amitabh」に電話をかけ、話し始めた監督。楽曲のおおまかなアイディアや打ち合わせの日程を決めたところで、監督、気づいた。「電話の相手、Amitabh Battachariyaやない・・・! Amitabh Varmaや・・・!」しかし、そこまで話をしてしまったので今さら言い出せず、Amitabh Battachariyaも忙しい人なので、ひとまずVarmaに作詞をして持ってきてもらいました。すると、それがたいへん良い仕上がりだったため、そのままVarmaの作詞が採用されることになったということです。そしてなんと、この「間違い電話」の事実はこのインタビューで語るまで、誰にも明かしていなかったんだとか。「間違い電話」が素敵な奇跡を起こしたようです。

なお、このインタビュー、一般人から監督への質問を事前に募集していたのですが、30:50あたりで最初の質問として、「日本に『PK』がやって来る可能性は?」という質問が採用されています(ちなみにこの質問をリクエストしたのは私でございます・・・!)。監督の回答は、「ちょうど2日前に日本の配給会社の人と会って話したから、時期はわからないけど、日本でも公開されるはずだよー」ということでした。なんと、2年越しでの日本公開実現です!

そんなわけで、Love is a Waste of Timeのミュージックビデオ。


歌詞の内容は、「胸のあたりが おかしな感じ。やっとわかった、恋は時間のムダづかい。それでも一生に 一度くらいは時間のムダづかいをしてみようかな」というものです。物語の後半においては、とても重要なフレーズともなります。


Dil Darbadar

過去記事を再編してお届けします。

PKが絶望して、雨の中、指輪や数珠をどんどん外すシーンで流れる曲、Dil Darbadar(ディル・ダルバダル、心はさまよう)。映画中では短い時間しか使用されていませんが、全曲を聴くと、切ないメロディー、神を探しても探しても見つけられずさまようPKを示唆する歌詞、たいへん素晴らしい曲です。
youtubeで聴くことができますので、ぜひ最後まで聴いてみてください。『PK』から抜粋してアレンジした映像が使われていますが、これまた胸が締め付けられる切なさです・・・!
「(神よ)なぜ隠れ鬼を続けるのか、私を故郷へ連れ帰ってくれ」という内容です。


記事検索
アーミル・カーン(『きっと、うまくいく』のランチョー、『チェイス!』のサーヒル)のファンです。 アーミル主演、2014年12月インド公開の映画『PK』は日本未公開ですが、ネタバレをブログに書いています。 アーミルとPKに興味のない方は、積極的にブロック、RTブロック、ミュートなどしてくださいね!
メッセージ